国産産業用ドローンの開発を行う株式会社自律制御システム研究所(以下ACSL)は3月15日、兵庫県たつの市で実施された補助者無し目視外飛行(Level3)での鳥獣害調査に同社開発機「ACSL-PF2」を提供したことを発表した。本取り組みは兵庫県「令和2年度ドローン先行的利活用事業」の事業テーマ「鳥獣対策(シカ等の生息状況調査)」の1つで、株式会社T&Tが実施した。
本取り組みの背景として野生鳥獣による農作物被害拡大がある。2019年度の被害額は158億円と見積もられた。また森林の被害面積は全国で年間約5千haであり、このうちシカによる被害が約7割を占めるといわれている。最近では、鳥獣害対策にドローンを活用する例も見られており、鳥獣の個体数や生息域の調査、追い払いなどに活用されている。人が踏み入れにくい山間部での調査にドローンを用いることで、人手による労力やコストを削減し、より広域の調査を短時間で実施することが可能となる。
以下が実施概要と結果である。
<概要>
実施日:2021年3月10日(水)~11日(木)
場所:兵庫県たつの市(播磨科学公園都市)
目的:シカ等の生息状況調査について、以下の2点を検証
・ドローンを用いた空撮調査の優位性(安全性、効率化、高精度化)
・さらに、LTE通信を用いたレベル3飛行による遠隔地調査の効果
内容:播磨科学公園都市内でLTE通信を用いたドローンの遠隔操作と映像の伝送を行い、日中における都市内のシカ等の生息状況について、赤外線カメラを用いて調査
<結果>
・徒歩では入ることが難しいエリアの上空75mからドローンで撮影し、ニホンジカを確認することができた
・4K可視光カメラではニホンジカを確認できなかったが、赤外線カメラを使用することにより、対象の判別が可能であることが分かった
以下は実際に可視光カメラと赤外線カメラで撮影されたものだ。赤丸はニホンジカを確認できた場所を示している。
ACSLは国産の産業用ドローンを開発しており、物流、インフラ点検、災害等、様々な分野で採用されている。ドローンの制御を担うフライトコントローラを自社で開発しており、セキュアで安心なドローンの社会実装を推進している。特に、全国的にも事例の少ない補助者無し目視外飛行(Level3)について、多くの実績を積んできた。同社はこれらの経験を活かし、本取り組みにおいて国産ドローンの提供および飛行のサポートを実施したという。