楽天と、AirMap(米国カリフォルニア州サンタモニカ)は2017年3月15日、日本国内における商用ドローンの運用者および空域管理者に対し、無人航空機管制(UTM)ソリューションを提供する合弁会社「楽天AirMap株式会社」を設立したと発表しました。サービス開始は2017年半ばを見込んでいます。
目次
無人航空機管制(UTM)とは
ドローンが今後商用化されて空を飛び交う時代になった際、現状のように各々がバラバラに飛行させていては事故が頻発するのは確実です。そのため、将来的に必要になってくるのが無人航空機管制(Unmanned Traffic Management、UTM)。具体的には、一機一機の飛行ルートや高度の管理、データの管理・解析、飛行の許可、リアルタイムなモニタリング、飛行禁止エリアへの侵入を防ぐなどの役割を持つ、空のインフラ、プラットフォームとなるシステムです。空港の交通管制がこのシステムを使用すれば、周辺を飛行するドローンを確認することができます。
楽天AirMapで何が起こり得るか
AirMap社は2015年に設立されたばかりのまだ若いベンチャー企業ですが、航空交通管制システム分野でNASAと協力する企業の一つにもなっている今最も注目されているUTMシステム会社です。同社がこれまでに確保した資金は、マイクロソフトベンチャーズから2600万ドル(約29億6000万円)。それ以外にも楽天は勿論、エアバスベンチャーズ、クアルコムベンチャーズ、ソニー、中国・ユニック(Yuneec)から投資を受け、合計で約4300万ドル(約49億円)となっています。
国内は楽天の一人勝ちになる可能性も
AirMap社に投資した会社やその額を見ても、同社への注目度の高さが伺えます。世界最大のドローン市場である米国で、同社のUTMシステムがデファクトスタンダードとなる可能性は大いに有り得る話です。また、既存の航空管制システムとの統合も期待されているため、将来はAirMap社の管制システムが民間の旅客機等が飛行する空域も含めた、空全体のインフラとなり、巨大なプラットフォームとなるかもしれません。
つまり、世界最大市場の管制システムを手掛ける可能性があるAirMap社と早くから手を組み、同社の世界基準になり得るUTMシステムを日本に持ってくる楽天は、国内のデファクトスタンダードとなり一人勝ちする可能性が高まったということになります。
国内のライバル
勿論、国内にも同様に空のインフラの座を掴み、巨大なプラットフォームになるべく動いている企業は他にも存在しています。今回の楽天もそうですが、最近のあらゆるドローン関連のニュースに高確率で名前が出てくる企業ばかりです。今後の動きに目が離せません。
ソフトバンク×ブルーイノベーション『SORAPASS』
飛行可能区域や風速・気象情報の提供、操縦者や機体情報の管理、国土交通省への飛行申請の代行など、課題解決をサポートするサービスを一元的に提供するプラットフォーム。
■サービス概要
- 飛行禁止・危険区域等の地図公開
- 操縦者情報管理
- 機体情報管理
- 気象情報提供
- 3次元地図
- 飛行申請書・報告書作成サポート
- 行政書士による飛行許可申請サポート
KDDI×プロドローン×ゼンリン『スマートドローンプラットフォーム』
IoT時代において、ドローンがモバイル通信ネットワークにつながり、3次元の空間情報を基に自律飛行するようになると考え、インターネット上の3次元地図、運航管理情報等との連携により安定した自律飛行を実現するシステムを3社それぞれの強みを活かし開発する。
■サービス概要
- 4GLTEネットワークに直接接続し遠隔地からも自由にフルコントロールが可能な高機能なドローン機体
- 空の3次元地図
- 運航管理
- クラウド
- モバイル通信ネットワークにつながったドローンの自律飛行や衝突回避など飛行ルート管理
- ドローンが取得したビックデータの蓄積・分析
テラドローン×Unifly UTM事業の開始
UTM業界において世界的なリーディングカンパニーUniflyとパートナーシップを締結。衝突防止センサー、進入禁止エリア情報、地図情報、広範囲に活用可能な電波、UAV・有人機飛行情報、個体・システム、セキュリティ、気象情報等の情報や技術の組み合わせにより精度の高いUTMサービスの提供を目指し、産業毎のニーズに合わせた機能やUIを実装していく。
■サービス概要
- 飛行計画、飛行ログの管理
- UAV飛行情報(位置、高度、速度、角度・バッテリー残量等)のリアルタイム管理
- ジオフェンス:重要施設等飛行禁止区域、ユーザーにより設定されたエリア内への進入禁止
- オケージ(ジオフィルター):指定エリア内のみでの運行
- 障害物間の衝突防止、緊急時の停止
- 自動帰還
NTTドコモ・ベンチャーズが管制システムノウハウを得るため投資
カナダのドローンベンチャーPrecisionHawk社へ、NTTの武器である通信インフラとの親和性を考え投資。
PrecisionHawk社は、機体開発だけでなく管制システムの開発も行っており、すでに空域情報や衝突回避システムを持った低高度空域安全プラットフォーム「LATAS」を提供しており、AirMap社と同様にNASAのUTMプログラムに協力するなど、注目度の高い企業です。
将来的に今よりも広い範囲でドローンが飛び交うことが予想されるため、その際に必要になる管制システムにNTTの通信インフラを活かしていくと予想されます。
最後に
今はまだドローンは凄い物だと思われていますが、数年後には特別な物でも珍しい物でもなく、使われていて当たり前の物になっているでしょう。
かつて巨大だったカメラが持ち運べるサイズに変わり、インスタントカメラになり、デジタルカメラになり、ケータイ電話の中に納まるようになりと、どんどん身近になっていったように、ドローンも数年後には有難さなんて感じないほど身近な物になっているはずです。
そうなった時に必要になってくるのが管制システムです。ビジネスにおいて、あって当たり前のものの根っこ部分を掴むことほど磐石で強いことはないでしょう。上に挙げた他社と比べると、現段階ではインフラ・プラットフォームの面では楽天が一歩リードしている印象です。
ドローンが商用化されるまではもう暫くかかるため、その間の他社の追い上げからも目が離せません。