2022年7月14日、IHIエアロスペースは、重量物の運搬と長時間飛行を両立する、エンジンと電気モーターによるマルチコプター型ハイブリッドドローン「i-Gryphon」を開発したことを発表しました。
同機体は、ガソリン・ロータリーエンジンと電気モーターにより飛行するハイブリッドドローンで、マルチコプター型ドローンとして最大クラスの可搬重量と飛行時間を実現しました。現在、試作2号機により、自動運行および長距離通信機能を検証するため飛行試験を実施しています。
災害時の物資輸送や、山間部インフラ整備時の資材運搬、離島への医薬品・医療機器輸送、山小屋への物資輸送等への利用を想定しています。
少子高齢化による人手不足解消への一歩
eコマースの拡大や少子高齢化による輸送分野での人手不足に対して、ドローンの活用が期待されていますが、バッテリーの性能限界により滞空時間は限られ、近距離輸送の用途に留まっているのが現状です。
多くのドローンが搭載するリチウムイオン電池は、フル充電した場合の航続時間は40分ほどで、荷物(約30kg)を満載すると、数kgのバッテリーでは航続時間が5~10分ほどとなり、重量物積載と長時間飛行の両立が課題となっていました。
同機体は、円筒形のダクトの中にプロペラ状のローターファンを設置、回転させて推進力を生みだす大出力ダクテッドファン2基を備え、その駆動源としてバッテリーの数十倍の質量エネルギー密度を持つガソリン・ロータリーエンジンを採用している。電気モーターと併用することで重量物積載と長時間飛行を可能になりました(搭載物36kg、燃料11kg時に約50分)。
ダクテッドファンの採用でリスクを軽減
安全性や操縦性、運用性を向上させる技術開発にも取り組んでいます。
可搬重量を向上させるためには大型ローターを採用することが一般的だが、直径が大きくなりガードが取り付けられずローターが露出し、安全性に課題がありました。同じ推力を小さな直径で達成するダクテッドファンを採用することでローターがダクトに収まり、人やモノにローターが接触するリスクを低減させています。
誰でも簡単に機体を飛ばせるよう、各種センサーや制御機器、ソフトウェアを備え、さまざまなシチュエーションでも自動航行・自動離着陸が可能、また雨天でも操縦可能な防滴仕様(IPX4)、および収納性・可搬性を考慮してプロペラアーム折り畳み構造を採択しました。
IHIエアロスペースでは、2020年度にi-Gryphon試作1号機による飛行試験を行って以来、新型機の開発に取り組んできました。今後正式発売に向けて、ハイブリッドシステムの開発だけでなくドローンとしての運用性の向上検討、安全を確保した自動運行技術の開発、最新の長距離通信技術の適用などを実施していくとしています。
なお、2022年7月20日~22日に東京ビッグサイトで開催される「第8回 国際ドローン展」において、i-Gryphon試作2号機を公開する予定です。
度々話題になる、地方の医療格差問題。長時間飛行可能なうえ重量積載も可能なドローンが飛べる日本になれば、わざわざ都心に移動せずとも適切な医療を受けられる日も近くなりますね。