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来るロボット社会の為の新周波数でドローン制御に成功

169MHz帯ドローン

情報通信研究機構(NICT)と産業技術総合研究所(AIST)は、革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の「タフ・ロボティクス・チャレンジ」の一環として、ロボットやドローン用の新たに制度化された周波数、169MHz帯を使ったドローンの遠隔制御飛行に成功しました。政府は2020年頃までに、目視外での安全なドローン運航実現を目指しており、今回実験された技術は、近い将来訪れるロボット社会に欠かす事ができないものとなっています。

これまでの周波数の課題点と新周波数

2.4GHzでは生命線の電波が途切れやすい

これまでのほとんどのドローンは、その制御や状態把握を行うための通信周波数帯として免許が不要な2.4GHz帯を用いています。しかし、同じ周波数帯を使う無線LANなど他からの干渉を受けやすく、構造物や樹木、地形などによって電波が途切れやすいという課題がありました。
2.4GHz帯では、ドローンの新たな用途として想定されている、物流や災害対応などの操縦者から1km以上離れた場所でドローンを安定的に運用することは困難とみられています。

新たに制度化された新周波数

総務省は、2.4GHz帯の課題点解決を図るとともに、きたるべきロボット社会への期待やドローンの長距離での運用や画像伝送のニーズに応えるため、2016年8月に新たに「無人移動体画像伝送システム」を制度化しました。新制度は無線局免許が必要になるものの、上空で10mW、地上で1Wまでの出力での運用が可能なため、条件が良ければ10km以上の距離で遠隔制御できる可能性があります。

飛行実験の概要

今回行われた実験のポイントは以下の3点。

  1. 平成28年8月に総務省が新たに制度化した周波数帯の一つ、169MHz帯を使ったドローンの遠隔制御飛行。
  2. 他のドローンを中継した遠隔制御飛行。(直接電波が届かない環境での運用が可能かどうか。)
  3. 飛行中に遠隔から他の周波数帯(920MHz帯)と切り替える機能の確認。(問題なく切り替えが可能であれば、ドローンの制御用無線がより高信頼なものに。)

実験で再認識された169MHz帯の課題

今回の実験に用いた169MHz帯は、新制度で利用が可能になった周波数帯です。ただし、周波数の幅が合計で約400kHz程度と比較的狭いこともあり、バックアップ用としての使い方が想定されています。これまで、この周波数帯を使ってロボットを制御したり、ドローンを飛行させて評価した例はなく、その通信品質に関するデータもありませんでした。

今回の実験では、これまでに920MHz帯で開発してきた技術である“応答遅延時間を一定に保ちながら、制御情報(コマンド)や機体の状態情報(テレメトリー)を途中の他の中継用ドローンなど等を経由してマルチホップ中継する機能”を変えずに、周波数とその送信出力のみ、169MHz帯の規格に切り替えられるように設計されました。

実験では、初めに920MHz帯で操縦者端末とドローン側の間で通信を確立し、そのまま離陸上昇させ、上空高度30mほどになったところで周波数を169MHz帯に切り替え、ドローンの飛行状態への影響を調べました。その結果、操縦者が制御コマンドを送信してからドローンに届くまでの遅延時間は、920MHz帯では60msほどであったところ、169MHz帯では2秒ほどかかり、テレメトリーの伝送速度が920MHz帯に比べて約半分になるという課題も見つかりました。しかし、ドローンの飛行に支障はなく、安定した飛行が可能であり、地上側でも多少データの更新頻度は落ちるものの、ほぼリアルタイムでテレメトリーが得られることが確認できたとしています。

周波数の切り替え

周波数の切り替えについては、920MHz帯から169MHz帯に切り替わるまでの時間は約20秒かかったものの、飛行自体は安全に維持されたままであることが確認されました。今後は更なる高速化を検討していく方針です。一方、一度169MHz帯に切り替えた後も、920MHz帯の信号を完全には切断していなかったことで、169MHz帯から920MHz帯に戻すときは、瞬時に切り替わることを確認しています。今回の開発により、異なる電波の伝わり方をする複数の周波数にまたがるハイブリッド型の運用が可能となり、ドローンの飛行に必要な無線通信の電波をこれまでよりも格段に途切れにくくする見通しが得られています。

中継局搭載のドローンを用いた中継制御

169MHz帯の実験では、直接電波が届かない見通し外でのドローン運用を想定し、途中に中継局を搭載した別のドローンをもう1機飛行させ、一度これを経由して目的のドローンを制御するマルチホップ中継制御による飛行も行われました。その結果、遅延時間とデータ伝送速度は直接通信の場合とほとんど変わらず、安定した飛行ができることが確認されています。

今後の動き

情報通信研究機構(NICT)と産業技術総合研究所(AIST)は今回の成果により、異なる電波の伝わり方を持つ複数周波数にまたがる運用が可能となり、ドローンの飛行に必要な電波をこれまでよりも格段に高信頼化できる見通しが得られたとしています。
実験では、直接目視できる範囲の数10m程度の距離での基本評価を行いましたが、今後は今回の実験結果を基に、以下の3点に注力して研究を進めていく方針です。

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