東京ほか国内全国に拠点を構え、海外では欧州・東南アジアを中心に事業展開する産業用ドローンソリューションプロバイダーであるTerra Drone株式会社は、橋梁点検におけるドローン搭載型グリーンレーザー測量による洗掘調査を実施し、その結果を2021年10月22日(金)に発表しました。
目次
従来人間が行っていた橋梁の洗掘調査をドローン搭載型グリーンレーザーで安全に実施
河川や水路の上の道路橋では、橋脚部分に上流からの水流が絶えず当たっており、これにより橋脚部分は水流で削られ洗掘を引き起こす場合があります。洗掘が進むと橋脚の基部が露出し、橋梁倒壊の原因となるため、定期的に洗掘調査を行う必要があります。
従来、この洗掘調査は潜水士が水中に潜って実施していたため、増水などの影響で水の流れが速い場合、事故の危険性が生じていました。また、川底を撮影した写真が不鮮明で洗掘状況の把握が困難な場合もありました。洗掘調査をグリーンレーザー測量で実施することで、地上の安全な場所から川底の状況を確認でき、安全性の高い洗掘調査を実現できます。
今回、Terra Droneが行った調査対象河川では、水深3.5mまでデータを取得することができ、洗堀状況を3次元データで確認することができました(※)。
※調査可能な深さは水の濁り具合などの状況によって変化。
<調査方法>
(1)UAVグリーンレーザーを用いて水中を計測
(2)橋脚部及び陸上エリアはUAVレーザー計測を行い、取得した点群データを水中の点群データと合成
以上の二種類の測量により取得した3次元点群データから、橋脚部分と河床データを表した点群データを作成し、洗掘深さ測定値を計測します。また、点群データから橋梁の断面図イメージも作成することができます。
ドローン搭載型グリーンレーザーによりこれまで不可能だった厳密な地形調査などが実現
ドローン搭載型グリーンレーザーとは、ドローンにより空中からレーザー光を発射し水底地形を高密度に計測する技術です。一般的なドローンを使った写真測量では、樹木下や水面下の地形まで厳密に把握することはできず、さらに近赤外線を使ったレーザースキャナーでは水に光が吸収されてしまうため、水で濡れているような場所は計測が困難でした。水中を透過する波長のグリーンレーザーを使用することにより、濡れた地面や水面下の地形計測を可能となり、ボートなどに搭載するマルチビーム測深機では計測ができなかった浅水域や岩礁付近の地形データ取得も可能となりました。
グリーンレーザーは国内初のシステムとして、国交省が異分野の連携による研究開発を促進する「革新的河川管理プロジェクト」にも選定され、陸上・水中を問わない3次元計測により、河川災害発生時、河川構造物計画前の設計用調査、ダム堆砂測量などにおいて、調査管理の効率化・高精度化を実現します。
増加する風水害対策として求められる3次元データ化による地形把握のニーズを受けグリーンレーザー計測が進化
地球温暖化の影響で気候変動リスクが高まる中、近年全国各地で記録的大雨を伴う風水害が多く発生しており、河川の氾濫や土砂崩れにより多くの被害が発生しています。災害による被害を最小限にとどめる対策としては、河川や森林地帯を面的かつ詳細にとらえた3次元データ化による地形の把握が必要となります。
また、国土交通省からは建設土木、インフラ分野におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)化を推進しています。建設現場のあらゆるプロセスでICTを活用して生産性向上を図る取り組み「i-Construction」を推進するために、2016年より国直轄工事などで積極的に「i-Construction」を導入しており、建設業界内においてもICTの高度利用が普及し始めています。
また、道路施設、上下水道設備、公共施設など社会インフラの老朽化に対しても、社会インフラの維持管理業務を効率化することや熟練技術者のノウハウ継承を目的に、一部の維持管理業務でのカメラを搭載した「路面測定車両」やドローンなどを用いた点検などで効率化が進められているなど、港湾や河川領域でもDX化推進の波が広がっており、同時に様々な分野において3次元データ化のニーズが高まっています。
1回2時間以上の長時間フライトによる地形計測の実証実験も実施
また国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 港湾空港技術研究所と、ドローン専用レーザースキャナーシステムの製造販売などを手掛ける株式会社アミューズワンセルフでは、ハイブリッドドローンに搭載したグリーンレーザースキャナを用いて、世界初の試みとなるハイブリッドドローンに搭載したグリーンレーザースキャナによる長時間の海底地形計測の実証実験を実施、効率的に高精細な海底地形を計測できることを2021年4月に実証しています。
これまでバッテリー容量の制限からドローンのフライト時間は20分程度の短時間が限界でしたが、同実証試験では、模型用小型エンジンの製造・販売を行う小川精機株式会社が開発したドローン搭載型発電機(レンジエクステンダー)による給電を行うことで、グリーンレーザースキャナを搭載した状態でも1回2時間以上の長時間フライトを実現しています。
これまで海象条件やバッテリーの時間的限界によって計測ができなかった場所の海底地形が得られるようになり、長時間の飛行によって沿岸域における種々の観測手法への応用する可能性を広げています。
レーザードローンの開発により建設・インフラ業界のDX化を進めるTerra Drone
2016年に創業したTerra Droneは、世界的なドローン市場調査機関のDrone Industry Insightsによる「ドローンサービス企業世界ランキング2021」において、産業用ドローンサービス企業として世界2位に選ばれ、2021年2月にはシリーズAで15.1億円を調達。測量分野では大手ゼネコン・建設コンサルからの案件を中心に、世界でもトップクラスとなる2,000件以上のドローン測量/点検実績があります。
2021年5月には、レーザードローン「Terra Lidar」の新型モデル「Terra Lidar One」を発売、レーザードローンを用いた建設業界のデジタル化を進めています。
従来のレーザードローンでは、フライト計画の作成ミスによる衝突リスク、機体や解析ソフトを含めて1000万円以上の初期投資、大きな機材を運用する手間などが問題となっていました。
Terra Droneはこれらの問題を踏まえ、6方向の検知機能を搭載しコンパクトな折り畳みが可能なMatrice300RTKに機体を変更、フライト高度も70m以上に向上させ、フライト速度も3m/秒から10m/秒に速くなりました。
対地高度・フライト速度の上昇によって、より効率的な計測が可能となり、1時間あたり50haの計測が実現されています。
解析サービスも含めて996万円に価格を抑えることで、初期費用の回収リスクを最小限に抑えています。クラウド上で解析から公共測量の帳票作成まで可能なワンストップソリューションとして提供しています。
また2021年2月に国際石油開発帝石株式会社(INPEX)と立ち上げた事業構想「INPEX‐Terra Drone Intelligent Drone構想」では、点検分野において、ドローンなどのエアモビリティを用いた、設備点検の自動化などを実現し、開発・生産・操業業務におけるDXを推進しています。また、同業界向けに特許取得済みのUT(超音波探傷検査)ドローンを用いた検査技術も導入しています。
Terra Droneでは、今後もドローンを活用したサービス提供を加速させ、クライアントのスムーズな案件遂行に向けた提案を実施することで、建設業界やインフラ業界におけるDX化の推進に貢献していくと発表しました。