将来の課題に動き出した建設業界
建設業界が直面している問題のひとつに、少子高齢化社会による将来の人材不足がある。
現在働いている技能労働者の約3分の1にあたる110万人が今後10年で離職をすると予想され、それを補えるだけの新たな人材が入ってくることは考えにくい。
それを解決しようと政府は今年度より公共工事を受注した建設現場でのドローン等を用いたICT(情報通信技術)活用の義務化を決定しました。
そんな中、既に実際にドローンを建設現場での測量に本格的に使っている会社が鹿島建設です。
以下は昨年9月の記事ですが、かなり正確なドローンによる測量データを出すことに成功しているのがわかります。
鹿島(社長:押味至一)は、3次元図面製作等を手掛ける(株)リカノス(本社:山形県山形市 社長:平慶幸)と共同で、ドローンによる写真測量を利用して高精度な3次元図面を短時間で作成し、土量管理、工事の進捗管理に利用するシステムを開発しました。本システムは、空撮からデータ処理までの一連の作業において、ドローンやカメラ等の機器の選定、作業方法や使用ソフトの最適化を図ることで高精度な空撮測量を実現します。
本システムを大規模造成工事に適用したところ、誤差±6cm以下まで精度を向上でき、測定時間や費用を大幅に削減できることを確認しました。 鹿島建設プレスリリース2015/09/25
時間、費用、人が多くかかりすぎていた
この開発されたドローンで何が具体的に改善されたのか、これまでの測量にあった課題にはどんなものがあったのかを以下にまとめました。
■ よく使われていた光波測量器を使った地上測量は、図面化をし、計算するまでの作業に膨大な手間と時間が必要。
■ 3Dレーザー測量という3次元データを出力できるものもあるが、時間と設置箇所の制約を受ける。高額である。
■ 光波測量器も3Dレーザー測量も大型重機が稼働している中での作業には危険を伴うため、作業を一時中断する必要がある。
■ ドローンによる写真測量は既に存在していたが誤差±10cmと満足のいくものではなかった。
つまり、工事の進捗管理をするために膨大な時間、お金、人を投入しなければならなかったということです。
最新のドローンによって全てまとめて解決
今回の最新のドローンを使ったシステムを開発したことによって、以下のようにこれらの課題を一挙に解決することに成功しました。
□ 約2haの範囲の空撮に要する時間は約10分程度で済み、写真を合成し3次元図面を作成するまでの所要時間はたったの4~5時間と、大幅に作業時間を減らすことに成功。
□ 撮影は空撮のため、重機類を止める必要がなくなった。昼休みなどの短時間で撮影が終わる。
□ 3Dレーザー測量のデータと比較しても、±6cmと十分利用可能なデータを出すことができるようになった。
□ 費用面では3Dレーザー測量の4分の1。光波測量の5分の1以下。
□ 測量から、成果品としてデータを出すまでの日数は、光波測量で8日、3Dレーザー測量で3日かかっていたところを1日に短縮。
□ 成果品作成にかけていた人数は光波測量で10人、3Dレーザー測量で2人だったが、今回のシステムでは1人だけ。
このように今まで抱えていた測量に関する課題はこのシステムで大きく改善されています。
費用の面、作業時間等を大幅に減らすことに成功したことはもちろんですが、最も注目すべき点は作業に当たる人を減らすことに成功したことではないでしょうか。
冒頭でも触れたように、日本は将来少子高齢化により人材が減っていくという問題は避けて通れません。
しかし、世界に先駆け、コストをかけずに作業効率化させる最新テクノロジーを発展させるチャンス、という捉え方もできるのではないでしょうか。
ドローンが話題になってからというもの、『空の産業革命』という言葉をよく耳にするようになりましたが、我々が普段生活しているところでは見えにくい部分から徐々に革命は始まっているようです。