民生用ドローンの市場で世界シェア7割を誇り、ドローン業界をリードしているDJIは、機密性の高い政府や企業顧客向けに、データのプライバシー保護を強化するため、操縦アプリからインターネット通信を停止できるローカルデータモードを開発していることを発表しました。
ローカルデータモードのメリット・デメリット
今回発表のあった、新設予定のローカルデータモードを有効にすると、「DJI GO」、「DJI GO 4」、「DJI XT PRO」、「DJI PILOT」、「GRAND STATION PRO」等の操縦アプリはインターネット経由でのデータの送受信を停止します。オフラインとなることにより、飛行中に生成されたデータのプライバシー保護を強化し、重要度の高いインフラ点検や秘匿性の高い商業取引、政府関連など機密性の高い業務での重要なフライトにも対応可能です。
しかし、それと引き換えに、飛行の安全性と機能性を高めるために定期的にオンラインで情報を取得している、地域の地図やジオフェンシングデータ、アプリの最新バージョン、正しい無線周波数や電力要件などの更新が行われなくなるため、一部パフォーマンスに制限がかかる可能性もあります。
DJIコメント
今回の発表にて、DJIの政策法務担当バイスプレジデント、Brendan Schulmanは以下のように述べています。
「私たちは、DJIのテクノロジーを活用し機密性の高い業務を行う、世界中の公的機関や民間企業をはじめとする産業向けの顧客ニーズに対応するローカルデータモードを開発しています。DJIは、ユーザーの写真やビデオ、フライトログのプライバシーを厳守することに全力を尽くしています。ローカルデータモードにより、データセキュリティのニーズが高い顧客に対して、より一層の保護を提供します。」
米国陸軍への対応を意識か
今回の発表は、米国陸軍への対応が意識されている可能性が高いです。というのも、米国陸軍は、全将兵宛に「サイバー攻撃に対する脆弱性」を理由に、DJIのドローンの使用を禁止する命令を2017年8月2日付で出しています。
機密文書の為「脆弱性」に関しての詳細は明らかにされていませんが、
- DJIの部品やソフトウエアを搭載したシステムの利用取りやめ。
- DJIのアプリケーションはすべてアンインストール。
- バッテリーと記録メディアの取り外し。
上記のような厳重な通達を米国陸軍が出したばかりのタイミングでの発表のため、この緊急事態への対応と考えるのが自然でしょう。
急速に拡大しているDJIの顧客基盤
“開発中”の機能を突然発表したことは、米国陸軍の下した決断への対応が急務だったからだと考えられますが、同社によれば「ローカルデータモード」の開発は、数ヶ月前から行われていたとしています。
これまで、趣味の空撮愛好家や個人のドローンパイロットから抜群の支持を集めてきた同社ですが、顧客基盤がプロパイロットや商業、政府、教育関係者まで急速に拡大しており、「顧客の多くがデータの取り扱いに関する更なる保証を求めている」現状だといいます。
今回の発表と合わせて同社は、これまでもプライバシーの重要性をしっかりと認識していたことを示しており、
- ユーザーのフライトログや写真、ビデオを収集したりアクセスすることは、ユーザー自身がフライトログをDJIサーバーと同期させたり、SkyPixelサイトに写真やビデオアップロードしたり、またはDJIの修理サービスに依頼しない限りないこと。
- DJI以外に、ドローンユーザーとデータのプライバシー保護のために、積極的に活動している民生用ドローンメーカーはないこと。
上の二点を再度アピールしています。
一連の出来事で証明されたDJI社ドローンの性能
軍事用の機体を作っていないにもかかわらず、米国陸軍で何かしらの用途で活用されていた事もそうですが、上で述べた“顧客”の中にはハリウッドの映画会社も含まれています。今回のDJI社の発表までの一連の出来事により、思わぬ形で同社のドローンが多方面で活用され、その性能が他社製品よりも優れていることも同時に証明されたのではないでしょうか。
顧客基盤の急速な拡大によって、産業利用に対するセキュリティー面が満足でないことが浮き彫りになりましたが、この壁を乗り越えた時、DJIは更なる進化を遂げるのではないでしょうか。
画像・情報提供元:DJI