2015年11月5日、安倍総理から「早ければ3年以内に、ドローンを使った荷物配送を可能とすることを目指す」旨の指示があり、それも後押ししたのか2016年はドローンが本格的に活用され始め、サービスが次々に開始される一年となりました。
機体の技術も進化し、事前にプログラムされたルートを完全自律制御で飛行するドローンや、全天候型のドローンなど、各メーカーは将来的に更に活躍することになるであろうドローンの開発に全力を注いでいます。
携帯電話通信事業者のトップ3社も競い合うようにドローン業界に力を入れ、それまで電波の送受信の距離に限界があったドローンに携帯電話回線を使い、回線が入るところであれば遠隔地でも操縦できる機体をメーカーと共同開発するなど、各社が更にドローンを活用していくにあたり不可欠な技術を次々と発表しています。
しかし、これまで行われてきた実証実験の飛行距離は安全面や規制の兼ね合いから、長くても数キロメートルに終わっていました。
そんな中、1月12日に福島県南相馬市の海岸において、経済産業省とNEDO、福島県、南相馬市、(株)自律制御システム研究所は、完全自律制御によるドローンで約12キロ離れた場所に荷物を配送する飛行実証試験を実施し、見事に成功させました。
飛行実証実験の内容
今回の実験に使用されたドローンは、楽天のドローンを活用した配送サービス「そら楽」の専用機「天空」のベースとなっている「ACSL-PF1」。
福島県南相馬市の海岸線約12kmの区間(南相馬市小高区村上城跡~同市原町区北泉海水浴場)を飛行し、完全自律制御による長距離荷物配送を行いました。
この成果は、平時の荷物配送のみならず、災害時の緊急物資輸送にも活用されることが期待されます。
今回の飛行試験では、配送先をサーフィンの
メッカである福島県南相馬市の北泉海水浴場に設定し、ドローンが現地のサーファーに温かい飲物を届けました。
実証実験の目的
インフラ維持管理・更新等の社会課題対応システム開発プロジェクト/ロボット性能評価手法等の研究開発/無人航空機を活用した物流システムの性能評価手法等に関する研究開発を行う、NEDOプロジェクトの一環として、(株)自律制御システム研究所が主体となって行いました。
NEDOプロジェクトは、ドローン等に関して、用途に応じた性能・安全性の評価手法(評価軸、評価軸に沿った性能レベル、標準的な性能測定試験方法)を設定することを目標としており、今回の飛行試験の成果は、物流に用いるドローンの積載性能に関する性能評価手法等の研究開発に活用されます。
「福島浜通りロボット実証区域」から復興を目指す
今回このような12キロメートルという長距離の実証実験が可能になった背景には、東日本大震災により起こった東京電力福島第1原発事故からの復興という福島県の思いがあります。
福島県では「福島浜通りロボット実証区域」にて、災害対応ロボットやインフラ点検用ロボットに関する事業を行っている企業、大学、研究機関等に対して、福島浜通りの橋梁、トンネル、ダム・河川、山野等オープンスペースを、福島県が斡旋して、実証試験や操縦訓練の場として提供し、ロボットの実用化を支援しており、昨年度の事業開始から現在まで16件(のべ47日間)の実証を実現に結びつけています。今回は、NEDO及び(株)自律制御システム研究所の相談に応じて、福島県南相馬市の海岸線において、ドローンの長距離飛行試験の実施に向けた調整を行いました。
福島県は今回の飛行実証試験に代表される福島浜通りロボット実証区域での取組を、復興に向けた新産業創出の施策である「イノベーション・コースト構想」の実現に向けた第一歩とし、南相馬市及び浪江町に整備予定のロボット・ドローンの実証拠点「ロボットテストフィールド」とも連携して、ロボットやドローンの産業を集積させて東京電力福島第1原発事故からの復興につなげたい考えでいます。
「世界初・完全自律制御ドローンでの長距離荷物配送に成功しました!~福島浜通りロボット実証区域でドローンの実証にチャレンジ!~」(経済産業省) http://www.meti.go.jp/press/2016/01/20170112003/20170112003.htmlを加工して作成