産業用ドローンの機体設計構造技術の研究開発を行う株式会社エアロネクスト、ITソリューションを提供する株式会社ACCESS、日本最大級の出前サービス『出前館』を運営する株式会社出前館、創業120周年を迎えた牛丼チェーン『吉野家』を運営する株式会社吉野家は、神奈川県、横須賀市、横須賀市立市民病院、神奈川県立海洋科学高等学校の協力のもと、出前館のアプリで注文された吉野家の牛丼弁当を横須賀市立市民病院の医療従事者にオンデマンドでドローン配送する実証実験を、2021年6月10日(木)に実施しました。
空の産業革命レベル4への挑戦
今回の実証実験は2019年12月に神奈川県のドローン前提社会の実現に向けたモデル事業として採択されたエアロネクストの「ドローン物流定期ルートの開設に向けた実証実験」、そして横須賀市の地域課題解決を目指した「ヨコスカ×スマートモビリティ・チャレンジ」の一環として実施されたものです。
また2022年度の「空の産業革命 レベル4」解禁に向けた将来の食料品や医薬品のドローン定期配送を見据えた取組みでもあります。「空の産業革命 レベル4」とは、2020年7月に発表された小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会による「空の産業革命に向けたロードマップ2020」で明記されている、2022年度を目標とした「有人地帯での補助者なし目視外飛行」の実現フェーズのことで各社が見据えた取組みを進めています。
今回の実証実験の概要は以下の通り
(1)期間:2021年6月10日(木)
(2)飛行区間:横須賀市立石公園~横須賀市立市民病院
(3)運搬物:吉野家の牛丼弁当
(4)実証手順と内容
・出前館のアプリで注文された吉野家の牛丼弁当を吉野家のキッチンカーで調理、専用ボックスに格納し、出前館の配達員によってドローン離陸地点(立石公園)まで搬送。
・専用ボックスがドローンにセットされ、ドローンは立石公園から離陸、約5.2km(海上4.5km、陸上0.7km)の航路を約10分間で飛行し、横須賀市立市民病院屋上に着陸、医療従事者に弁当が届けられる。
・病院屋上に到着後、熱々でたれもこぼれず中身も偏らず高い配送品質で届くことを確認。
(5)各社の主な役割
株式会社エアロネクスト:本実証統轄、取りまとめ、独自安定技術搭載ドローンおよび技術者提供
株式会社ACCESS:ドローンの遠隔運航管理、ドローンオペレーション総括、技術者提供
株式会社出前館:注文システム、デリバリー提供
株式会社吉野家:牛丼弁当の調理、提供
横須賀市立市民病院:実証実験協力
神奈川県立海洋科学高等学校:実証実験協力
横須賀市:実証実験協力 地域および関係者との調整等
神奈川県:実証実験協力 地域および関係者との調整等
横須賀市立市民病院のコロナ禍の実情と背景
今回の実証実験の協力先となった横須賀市立市民病院は、新型コロナウイルス感染症の入院が必要と診断された中等症の患者を受け入れる「重点医療機関」に指定された病院です。周辺に昼食場所も少なく、昼食のため外出する時間的余裕もままならない中で、新型コロナウイルス感染症対策により病院内の食堂も時間短縮で運営されており、医療従事者にとって温かいランチを取りにくいという食事環境にあります。また今後オンライン診療の検討も始めており、今回の実証実験では今後のオンライン診療と医薬品配送の可能性も見据え、協力先として選定されました。
コロナ禍におけるドローンの顕著な使用例としては医療用ドローンによる物資やサンプルの配送、消毒液噴霧が挙げられるが、こうした実験により間接的な感染症拡大の貢献も前進が期待されています。
物流に特化した機体が初登場!
今回の実験で使用する機体はエアロネクストが独自開発した機体構造設計技術「4D GRAVITY®※」を搭載した物流専用ドローン。飛行部と荷物搭載部が分離した構造で、飛行性能、応答性能、着陸性能に優れた物流用途に特化したモデル。3月19日に発表した株式会社⾃律制御システム研究所(ACSL)とエアロネクストの共同開発の最新の機体で、今回の実証実験で初めて披露となった。
※「4D GRAVITY®」
機体重心を最適化することで、飛行中の姿勢、状態、動作によらずモーターの回転数を均一化して、安定性・効率性・機動性といった産業用ドローンの基本性能を向上させる構造設計技術。この技術は、機体の分離結合構造とペイロードの接続の仕方に特徴を有しており、エアロネクストは、この技術を特許化して「4D GRAVITY®特許ポートフォリオ」として管理、「4D GRAVITY®」による基本性能の向上により、産業用ドローンの新たな市場、用途での利活用の可能性も広がるとしている。
<特徴>
今実証実験で使用した物流専用機体は以下の3つの特徴を持ち、飛行速度・飛行距離・配送可能重量・配送品質のレベルアップを実現している。
(1)荷物を機体の理想重心付近に最適配置
(2)水平定常飛行・前進特化型の物流専用機体
(3)独立変位可能な荷物水平維持機構