国立研究開発法人新エネルギー産業技術総合開発機構(以下NEDO)は4月27日、公募を実施していた「安全安心なドローン基盤技術開発」に対する提案3件について審査を行い、実施予定先を決定した。実施予定先は株式会社自律制御システム研究所・ヤマハ発動機株式会社・株式会社NTTドコモ・株式会社ザクティ・株式会社先端力学シミュレーション研究所である。これら5社は計16.1億円の助成金を受け2021年2月末までに高い飛行性能や操縦性、セキュリティ、低コストを実現するドローン基盤技術の開発を進める。
期待されるのは”純国産ドローン”
現在世界に流通しているドローンの約7割が中国の大手ドローンメーカーである「DJI」のものであると言われている。DJI製のドローンは性能が良く、機体バリュエーションも豊富な為、世界中のユーザーから重宝されている。ただし昨今、アメリカを中心に行われている中国ハイテク企業排除の動きからわかるように、通信を伴う機器を海外製品に依存するのは外交・セキュリティ上、とてもリスクが高いのだ。
当事業の目的は、”災害対応、インフラ点検、監視・捜索等の政府調達をはじめとする分野でのドローンの利活用拡大に寄与し、我が国のドローン産業の競争力を強化すると共に、関連するビジネスエコシステムの醸成を目指す”ということであり、具体的に政府調達を想定したセキュリティの高い”純国産ドローン”の開発・製造・量産を目論んだ内容となっている。
開発機体は小型を想定
当事業募集にあたり、おおよその想定開発仕様が公表されている。それぞれ以下の通りだ。
<ドローンの標準機体設計・開発>
• 総重量は1kg~2kg
• 最大飛行時間は30分以上
• Waypoint指示等による自動飛行が可能
• 標準カメラや高解像度カメラ(1インチ20Mpixel以上のCMOSセンサーなど)、赤外線カメラなどに交換可能で、ズームレンズなどのバリエーションにも対応可能
• 専用の送信機により操作可能であること。なお、操作モードは任意に選択可能であること
• 一定の防水性・防塵性を有していること
• プロペラガードが装着可能など、対人・対物障害防止策がとられていること
<フライトコントローラー標準基盤設計・開発>
• 高い飛行性能(最大風圧抵抗10m/s程度の耐風性能、垂直方向±0.1m/水平方向±0.3m程度のホバリング精度)を実現できること
• リモートID機能について、ASTM等の国際情勢を勘案し、対応可能なこと
• LTE通信によるコントロール及びテレメトリ通信に対応可能なこと
• 自律飛行モードとATTIモードを飛行中でも任意に選択できること
• フライトログの詳細データはセキュリティロックが掛かる一方で、セキュリティキーがあれば利用者がメーカーを介さずにCSV形式などで取得及び解読、解析可能であること
<飛行を支援するアプリケーション>
• テレメトリ情報が確認できること
• 機体の各種パラメーターの設定が可能なこと
• 自動飛行する際の飛行ルート設定を範囲指定により自動で設定、又は地図上で手動で設定できること
• 機体の状態、設定項目、周囲の状態の確認、遵法事項の確認などが予めアナウンスされること
機体の重量は1kg〜2kgを想定しているようだ。DJI Phantom4シリーズの重量が1.4kg前後であることから、おおよそ同等のサイズ・重量であることがわかる。主な利用シーンとして防災・災害対策を見込んでおり、持ち運びのしやすさを重要視したのではと考えられる。
当事業は政府等の顧客フィードバックを含めたアジャイル開発を実施しながら、2020年度内に事業を終了させるものとされている。「小型無人機の利活用と技術開発のロードマップ」に記載されている2022年の社会実装、有人地帯での目視外飛行の実現(レベル4)へ向け、どのような成果を上げられるのか、期待したいところである。