3月29日、東京電力ホールディングス株式会社(以下「東京電力HD」)と株式会社ゼンリン(以下「ゼンリン」)は、今後更に産業面でドローンが普及していった際に不可欠となる、安全飛行のためのインフラ「ドローンハイウェイ(ドローン専用の飛行空域・空路)構想」の実現に向け、業務提携に基本合意したと発表しました。
ドローンビジネスの現在と未来
普通に生活していてもなかなか目に付かないため実感が湧きづらいですが、現在ドローンは、空撮、農薬散布、農作物の生育調査、害獣調査、太陽光パネル点検、測量など、既にビジネスの現場で活躍しています。
今後は、パイロットが目視可能な距離で操縦をするこれまでのような方法とは別に、精度の高い自律飛行と長距離飛行を実現させることにより、現状は実証実験で止まっている災害対応、警備、そして最も注目を集める物流などの分野へ普及拡大が期待されます。
ドローンビジネスの拡大には政府も力を入れており、最近では国家戦略特区に選ばれている都道府県や市町村内でのドローン実験を、原則自由に行えるようにする事案が閣議決定されています。
これから更にドローンを取り巻く規制の緩和は進んでいくと予想され、2020年には市場規模1000億を超えると見込まれています。
しかし、ドローンの安全な自律飛行を実現させるためには、
- 目的地までの飛行空域に存在する構造物の正確な位置や高さを認知した衝突回避
- 中長距離飛行に対応するためのバッテリーの確保
これらの技術的な課題をクリアしなくてはなりません。
「ドローンハイウェイ構想」
ドローンを安全飛行させるためには「構造物の正確な位置や高さを認知」させる必要があると上で触れましたが、この課題は今回の東京電力HDとゼンリンの業務提携によりクリアすることができそうです。
東京電力HDは東京電力グループが保有する変電所、送電鉄塔(約5万基、送電線の長さ約1万5000㎞)・電柱(約590万基、配電線の長さ約33万8000㎞)、架空送電線などのインフラデータを持っており、ゼンリンは、日本全国99.6%の地図を保有している地図情報ナンバーワン企業であり、空域情報を3次元化した“空の3次元地図”を既に開発しています。このような両社のリソースを組み合わせることにより「ドローンハイウェイ構想」を実現させていきます。
実現に向けた取り組み概要
実際の取り組みとしては、セーフティ(障害物の事前予測・回避支援)・セキュリティ(ドローン飛行の信頼度向上)・ロングフライト(航続距離の飛躍的拡大)を主軸とし、以下のような流れになります。
- 送電鉄塔・架空送電線といったドローンの飛行における障害物となるインフラ設備の3次元データベースを整備・提供。
- インフラ設備の3次元データベースを用い、設備点検場所までドローンを誘導する技術(誘導プラットフォーム)を共同で研究・開発。
- 電力設備との衝突を避けつつも、地上に張り巡らされた電力ネットワークを「空から見える道しるべ」として活用することにより、目的地まで中長距離の安全・安心な自律飛行を支える空域「ドローンハイウェイ」を実現。
- 「ドローンハイウェイ」に付帯する、機体の充電や点検・整備・修理サービスを提供する「ドローンポート」を整備。
また、この他にも「GPS位置補正、気象情報提供などドローンの安全・安心な飛行に必要なサービスを幅広く提供可能なプロジェクトの検討を進めてまいります。」としているように、デファクトスタンダードを取り、将来的にはドローン産業のプラットフォームとして機能するシステムを構想しています。