数年前までは夢物語のようだったドローンによる宅配サービスなどのアイディアも、今では単発の実証実験のように環境を整えて実行すれば、技術的にはある程度可能なところまで進歩してきました。実際にAmazonは勿論、多くの企業から成功例が出てきています。
では今すぐにサービスをスタートできるかといえばそうはいきません。ドローンが上空を飛び交う世界を現実のものにするには、現在のバッテリーの持ち時間や電波の届く距離では満足のいくサービスを継続させることは不可能です。また、そこがクリアできたとしても航空機のそれと同様、管制システムがなければ無人航空機を自由に飛行させるのは危険過ぎます。機体の技術は見る見るうちに上がりそれらの問題を直ぐにでもクリアできるところまで来ていますが、ドローンに関する法律や規制の見直しであったり、管制システム構築の部分はまだまだです。
そんな中、世界ではAmazonやGoogleが持っているリソースを最大限に使い覇権を取りにきています。またしても日本は遅れをとってしまうのかと思っているところ、先進的でドローンを安全且つ効率的に飛行させる具体的なプロジェクトが国内で発表されました。
KDDI、ゼンリン、プロドローンの三社が業務提携して行っていく配送、点検、測量などをはじめとした商用ドローンのプラットフォームである『スマートドローンプラットフォーム』です。
今回はこれがどういうものか、実現すればどのようなことが可能になっていくのか見ていきたいと思います。
スマートドローンプラットフォームとは
スマートドローンプラットフォームは、商用ドローンの運用に必要な「ドローン機体」「3次元地図」「運航管理」「クラウド」の要素で構成されるもので、KDDIはモバイル通信ネットワークや通信モジュール、ハイエンド向けの産業用ドローンを開発・製造するプロドローンは機体、地図業界国内最大手のゼンリンが3次元地図をそれぞれ担当しています。
KDDIの役割
従来のドローンは手元のプロポ(コントローラー)と機体との電波が途切れると当然それ以上の操縦ができなくなってしまいます。しかし、このプロジェクトの「スマートドローン」はKDDIのモバイル通信ネットワークを活用することにより、携帯電話の電波が届くエリア内は理論上どこでも飛行できるようになります。また、映像や気象状況のような様々なデータを遠隔地に瞬時に伝送することも、これまでは難しかった遠隔地での自律飛行をさせることも、勿論人の手で遠隔操縦することも可能です。つまり、人がその場ではなく遠隔地にいたとしても、日本全国殆どの場所で飛行させることができるということになります。
プロドローンの役割
機体を担当するプロドローンは、従来のドローンが対象物から距離を置いての点検や撮影などしか行えなかったのに対し、世界で唯一作業用アームを取り付けた大型ドローンの実用化に成功させている会社です。現場で直接作業できるドローンを生み出す事が可能なため、当然今回のプロジェクトでも配送から災害現場での活用など市場の幅を広げることができます。
ゼンリンの役割
ゼンリンが提供する、目的地まで建物や飛行禁止エリアを認識し、最適な飛行ルートを選択するのに必要な3次元地図は、元々自動運転用地図として作られてきたため、先読み情報や経路設定、自己位置特定、誘導・制御など、今まで人間が行っていた『認知・判断・操作』を機械が行うようにできています。これを空の世界に応用することにより、まるでそこにドローン専用の見えない道があるかのように飛行することが可能になるのです。
より良いサービスで空のインフラへ
スマートドローンプラットフォームが実用化され運用されていけば、飛行する毎にクラウドに集まってくる各種データは統合・分析されるため、より安全で効率的な運用や新しいサービスに展開させることも可能です。3社の特徴が見事に合わさったスマートドローンプラットフォームは、これから先の空のインフラになっていき、更に我々の生活を便利にしてくれる可能性が大いにあるでしょう。
https://www.youtube.com/watch?v=Ilmi1hI7vkE