ドローンおよびAIを活用した各種ソリューションビジネスを展開する株式会社A.L.I. Technologiesは、ミサワホーム株式会社が東京都杉並区に建設した、サステナブルな暮らしを提案し持続可能な未来につながるコンセプト住宅「グリーン・インフラストラクチャー・モデル」(住まいづくり体感施設「ミサワパーク東京」内)へのドローンによる個別配送システムの実装を完了したと発表しました。
目次
個別配送システムとは?
今回実装した個別配送システムは、将来的に荷物の配達状況を視認できる可視化システムと連動することを想定し、移動式ドローンポートとそれに対応したドローン配送システムを住宅に実装したものです。
居住者は専用のアプリケーションを使い、ドローンポートを屋外に移動。ドローンは運航管理システム「C.O.S.M.O.S(コスモス)」による飛行管理のもと、ポートへの離発着、荷降ろし、配送拠点への帰還を行います。「C.O.S.M.O.S」を使うことで、複数のドローン・複数の配送先への同時オペレーションが実現し、多様なユースケースにも対応可能とのことです。またIoTと「C.O.S.M.O.S」を組み合わせることで、ドローンとのアプリケーション連携、自律飛行、ワイヤレス給電を行うことも可能になります。
【C.O.S.M.O.S(コスモス)】
A.L.I.が開発しているドローン運航管理システムです。ドローンの自動運用の原則となる、「機体の健全性」、「運用の確実性」、「周辺と運用者の安全性」をより確実に計画・監視・管理することを可能にするためのプラットフォーム技術です。飛行区間の定義から認証、決済まで複合的に知財化した空のインフラ特許に基づき開発しています。
ドローンによる配送で時間に縛られない暮らしを
A.L.I.では、ドローンによる個別配送システムの実装により、高齢者や体の不自由な方の外出回数低減や、介護中や育児中で外出が困難な方などの日用品や医薬品の注文配送ニーズに応えることができるとしています。またドローンによる個別配送が実現することで、受け取り日時に家にいる必要がなくなるため、居住者の自由な時間の使い方の創出、ライフタイムバリューの向上に繋がるとしています。
コロナ禍よる物流量急増、ラストワンマイル配送へ
ECのますますの普及に伴い、宅配便取扱個数は年々増加しており、新型コロナウイルス感染症による新しい生活様式は、さらにその需要を急増させました。一方で物流量増加に加えドライバー数の減少と高齢化による人手不足は深刻さを増し、新たな運送方法の確立が物流業界として喫緊の課題となっています。
こうした課題解決に向けて、ドローンによる物流を確立するための様々な実証実験や法整備が進んでいるなかで、物流用ドローンの配送において課題とされているのが、ドローンのポートから配送先となる個人宅までの間を配送する「ラストワンマイル配送」の問題です。宅配需要の急増、ドライバー不足などを要因となり、人の手による配送の限界がきている状況にあります。
A.L.I.では、今回の住宅におけるドローンの個別配送システムの確立は、配送会社と連携し一部地域における配送の代替手段としてドローンを使うことで、再配達の負担軽減やCO2排出低減といった、持続可能な物流手段としても貢献することができるとしており、物流における「ラストワンマイル配送」課題解決の一つになり得ると考えています。
ドローン配送のある「サステナブルな暮らし」
対象となる「グリーン・インフラストラクチャー・モデル」は、ミサワホームが住まいづくりの体感施設「ミサワパーク東京」(東京都杉並区高井戸)建設したコンセプト住宅です。⾃然災害や感染症への不安、空き家の増加、単世帯や共働き世帯、⾼齢者世帯の増加といった「暮らし」、「健康」、「環境」に関して社会が抱えるさまざまな課題があります。住宅をインフラのひとつとして考え、こうした課題の解決につながるサステナブルな暮らしの提案ができる住宅としてデザインされています。
人に最適な自然環境に近づけ仕事内容に応じて最適な構成にすることができるワーク空間、将来的な搬送・介護ロボットの導⼊に対応するフルフラットのバリアフリー設計、視覚と聴覚で空間を広げ離れた場所とのつながりを可能にした「コネクテッドリビング」、帰宅時に除菌が可能な「クリーンクローク」や家庭内感染から家族を守る「療養部屋」などのニューノーマル仕様など、最新の生活様式に対応した設計となっています。
また前述のとおり、コロナ禍でさらに急増した宅配需要により、物流業界で問題となっているドライバー不⾜や、⼈⼝の少ない郊外での物流インフラの維持問題に対して、ドローンの社会実装本格化を⾒据え、住宅側で⽣活⽤品や医薬品などの受け取りができる仕組みとして、バルコニーと隣接するフラットルーフに移動式のドローンポートを提案しています。移動式のドローンポートは、屋根の下にある待機場所から、荷物の到着場所に⾃動で移動し、受け取り後は所定の位置まで戻り、ワイヤレス給電により充電して待機します。
ミサワホームは、これまで社会ニーズに先駆けて環境に貢献できる住まいの研究を積み重ねてきており、1998年には世界初のゼロ・エネルギー住宅を発売、2010年には、2030年を⾒据えた更なる省エネルギー住宅として、LCCM(ライフサイクルカーボンマイナス住宅)を実現する「エコフラッグシップモデル」を発表。より良い住まいづくりがより良い未来づくりにつながると考え、今後もさまざまな社会の変化に柔軟に対応して貢献する、持続可能な住まいづくりを目指すとしています。
「空の産業革命 レベル4」に向けた歩みとは
現在、ドローンの分野の中でも最も大きなトピックとなっているのが、「空の産業革命 レベル4」と呼ばれる「有人地帯における補助者なし目視外飛行」です。政府は2020年7月に発表された小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会による「空の産業革命に向けたロードマップ2020」で明記されているとおり、2022年度を目標とした「有人地帯での補助者なし目視外飛行」を目指しており、これに向けた取組みを各社が進めています。
A.L.I.でも、「空の産業革命 レベル4」に向けた取り組みを実施しており、2020年12月にはSBSホールディングス株式会とその子会社であるSBSロジコム株式会社横浜幸浦支店とともに、約2kgのダミー荷物を搭載した物流ドローンの自動配送飛行の実証実験を実施。2021年5月には株式会社NTTドコモと、ドローンの社会実装および飛行業務の全国展開に向けた飛行運用業務における連携を開始し、docomo skyをはじめとした両社のノウハウと技術、リソースを組み合わせた運用業務の確立をすすめています。
今回の住宅におけるドローンによる個別配送システム開発をきっかけに、「空の産業革命 レベル4」を想定したドローンによるインフラ構築をさらに目指していくとしています。具体的にはレベル4を想定したドローンシステムの運用を目指し、オペレーターと機体の登録、認証及び一元管理、気象情報との連携、飛行状況のリアルタイム通信、危機管理のための遠隔操作といった機能を持つC.O.S.M.O.Sを活用した安心安全なドローンの運航管理を作り上げるとしています。