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空の地図でドローンを支えるゼンリン【後編・インタビュー】

ゼンリン

前編の『空の地図でドローンを支えるゼンリン【前編】』で、地図業界の最大手であるゼンリンのドローン業界での立ち位置を見てみた。

現在、ドローンの産業利用が本格化することを見越し、空のプラットフォームとも言えるUTM(無人航空機管制)の開発を名だたる企業が我先にと進めているが、どこの企業も必要になってくるのが地図データだ。

ドローンとの相性が抜群の3D地図開発にも取り組んでいる同社だけに、ドローン業界からは引く手数多の状態となっている。

この記事では、どのような流れでゼンリンが業界に参入したのか、今後の展望はどのように考えているのか、同社のドローン事業推進課長である田内滋氏へDRONE PRESS(ドローンプレス)が独占インタビューを行ってきたため、その様子をお届けする。

歴史あるゼンリンがドローン業界へ

DRONE PRESS(以下、DP)先ず、第二事業本部ドローン事業推進課はどのように立ち上がったのでしょうか。


田内滋(以下、田内):実は今いる第二事業本部に僕が異動になったのは前期で、今二年目なんですね。それまでは経営企画部門にずっといたんですが、たまたまその頃一緒にやっていた二人でドローンなんかの面白いことをやっていこうかという話になって、その後に執行役員と話をしていき、色々動き始めたので組織化していこうかということで昨年の9月に組織化しまして、今年人を倍増して取り組んでいるという状況ですね。
会社としては凄く珍しいパターンでして、期の途中でそういう箱ができるというのは、これまでおそらく無かったんじゃないですかね。


DPそうなるくらい、これからのドローンの市場を考えると動くべきだという判断だったのでしょうか。


田内:市場のところは作っていかないといけないですよね。今は市場があるかというとなかなかそうも言い切れないところです。なので逆に言うと作る魅力はありそうな領域ですよね。


DPそうですね、まだまだこれからといった感じです。
ドローン事業を始めるきっかけの部分をお聞きしたいのですが、一番初めに発表があったのが昨年5月の『ソラパス』、7月にIOT推進ラボで『ドローンの都市内安全飛行の実現に向けた空の3次元地図情報の実証プロジェクト』が準グランプリを受賞、9月に『ドローン事業推進課』の設立という流れになっています。
5月の『ソラパス』の話が出てきてドローン事業を考え出したのでしょうか、それともその前からドローン業界いけるんじゃないかという話は社内で出ていたのでしょうか。


田内:ドローン事業自体をゼンリンの中で事業検討し始めたのは2015年度頃から考えてはいました。
『ソラパス』についてはご承知の通り、DIDだとか飛行禁止エリアなどの、どこが飛行できてどこが飛行できないのかを可視化して欲しいというニーズがあったので、JUIDAさんとブルーイノベーションさんと連携して、既存のゼンリンが持っている地図情報で直ぐにサービス化できるものとしてご提供させていただいたという流れになっています。

現在表に出ている3つのプロジェクト

DP『ソラパス』『スマートドローンプラットフォーム』『ドローンハイウェイ』この御社が関わっているドローン事業の3本柱を、それぞれどのような活動なのか改めて教えていただいていいですか。


田内:『ソラパス』については先程お伝えしたような背景がある中で、ゼンリンとしては既存の2次元の既に保有している情報を提供しています。飛行禁止エリアの可視化だけでなく、国への飛行申請が可能なプラットフォームを構築しているサービスでして、どちらかと言うとドローンを飛行させるユーザーさんをターゲットとしてご提供しているサービスです。現在、利用者は数万人います。

ただ、実は弊社のドローン事業自体はそういった既存の2次元の地図を使ってお客様に訴求することが本来のやりたいことではなく、今我々は車の自動運転などにも凄く力を入れてやっているのですが、やっぱり機械に読ませる地図ですね。人が見る地図から機械に読ませる地図に世の中はどんどんシフトしていくのではないかなと思っておりまして、その一つの出口としてドローンというデバイスは、空飛ぶ自動運転カーじゃないですけど、そういった位置づけだと思いますので刺さるのではないかと思っています。

あとは、ゼンリンが長年蓄積してきた地上の地図は非常に使えるかなと思っています。理由としては、ご承知の通り上空150メートル以下を飛行するのであれば、何処を飛ばせば安全に飛ぶのかだとか、何処なら安全に落とせるのか、そういった情報は地上の建物だとか地上の情報だとかが非常に有効活用できるかなと思ってまして、我々が事業化をしてやらさせて頂いているという感じですね。

その一つとしてKDDIさん、プロドローンさんと連携しました『スマートドローンプラットフォーム』があります。空の3次元地図を活用し、スマートドローン構想を推進するために協業をさせていただいていまして、背景としてはドローンが飛ぶには通信環境が必要なのでKDDIさん、技術力の高い産業用ドローンが必要なのでプロドローンさん、弊社は空の3次元地図を作ろうとしていますので、この辺りが連携して将来的には航空管制みたいな仕組みをキャリアさんや他の企業さんが作られたときに、こういったリソースを提供していくという事を想定してやっていくという取り組みです。

一方、東京電力さんとの『ドローンハイウェイ』は近しい内容ですが、何処なら安全に飛ばせる場所なのか、というところが日本中何処を見てもありません。そこで、これまで障害物と言われていた送電線を沿って飛ぶことで空の高速道路のようにして目的地まで飛べるんじゃないか、且つ認証の仕組み等を入れることによって、悪用目的のドローンが入ってくることも防ぐことができるのではないか、または東京電力さんがお持ちの設備に例えば通信会社さんの基地局だとか、気象会社さんの気象センサーとかを設置することによって、より安全性だとか飛行状況を確保することができるのではないかと考え、今から三ヵ年で進めていく構想になります。これも行く行くはこういった情報を、ドローンの管制システムを作られるであろう事業者さんに提供していくことによって、出口として成立するのではないかと考えております。

そういった形で一応それぞれセグメントを分けておりまして、私が属しておりますドローン事業推進課については、将来的な空の3次元地図を研究開発して提供していくというフェーズですので、どちらかと言うと機械に読ませる地図として、KDDIさんや東京電力さんとの連携の仕組みのところについて今推進しているというところです。
一方冒頭申し上げました『ソラパス』につきましては、既存の弊社の地図情報を提供している領域ですから、現場の事業部門に運営を任せているいうところです。

DPそれぞれ三つは発表があった順番に話が出てきたのでしょうか。


田内:結構戦略的に考えてまして、先んじて東京電力さんとは以前からお話をさせてはいただいてました。
ただやっぱり一つ大きかったのは経産省の『IOT推進ラボ』で準グランプリを頂いたというのが非常に大きくて、あのお陰で色んな会社さんからのお声掛けも多くなりましたし、会社としてもドローン事業について、いけるんじゃないかみたいな後押しも徐々に出てきたのは事実かなと思います。


DP東京電力さんはだいぶ前ですか。


田内:その辺りからですね。

『スマートドローンプラットフォーム』と『ドローンハイウェイ』の違い

DPなるほど。先程の3つのプロジェクトのうち、『スマートドローンプラットフォーム』と『ドローンハイウェイ』は内容が重なっているところがあると思いますが、今後はそれぞれどのように進めていく予定なのでしょうか。


田内:実は僕は縦軸と横軸で分けると別セグメントだと思っています。
どこに機体がいるのかとか、誰が使っているのかという情報が必要です。あとは通信の状況。気象の情報。地図の情報というのが必要だと思っていまして、それを将来の領域だとかに提供していくスキームが必要だと考えています。東京電力さんと連携させて頂いている『ドローンハイウェイ』はまさにここの部分の領域なんですね。
空の3次元地図を作るにあたって、障害物となっているものの情報だとか、安全に飛ばせるルートについてもっと深みを持たせていくというのが、東京電力さんとの連携している領域です。KDDIさん、プロドローンさんとの『スマートドローンプラットフォーム』は、3次元地図、通信、機体を融合させるという意味づけがありますので、セグメントとしては違うかなというふうに考えてます。将来的には融合されるかもしれませんが。

DP将来的に融合されることも今の時点で既に有り得るお話なんですね。


田内:それぞれ我々はクローズドな関係で業務提携しているわけではありませんので、当然東京電力さんと連携しながら他のエリアの会社さんの情報を頂いたりと、どんどん広げていけられたら日本全国そういったハイウェイが出来上がるかなと。
そうは言えど、東京電力さんといえば日本全国の三分の一の市場を形成されていますので、非常に規模的にも大きいし、インパクトがあるかなと思っております。


DPインパクトは十分ですよね。我々もゼンリンさんと東京電力さんが組むと知って大きなプロジェクトだなと思いました。
先程、気象情報についてのお話がありましたが、気象情報・地図・ドローンが絡まったような活用方法、活用案があるということですよね。


田内:そうですね、、、少しだけ言いますね。(笑)
例えば東京電力さんと連携している『ドローンハイウェイ』ですけども、例えば高圧鉄塔の上を沿って行くドローンの道が出来たときに、当然ピンポイントでリアルタイムに風の情報って必要ですよね。そういった時にそのような情報を付加してあげないと、Aというルートが良かったけど、風の情報を勘案するとちょっと下のBというルートにしようかとか、もしくはそもそも今日ここは通行禁止区域ですよだとか、そういうことができないわけです。
ニュースで天気予報をやっていると思うんですけど、ああいうふうに予想・予報していくというのが非常に重要になってくるかなと思いますね。
多分そういうのが出来ないと産業用ドローンの事業拡大というのは、民間で考えるとなかなか広がらないと思ってるんですね。


DPその辺りの今日は飛ばせそうだとか、飛ばせなさそうだとかいうジャッジはやはり機械が自動で行うということですよね。


田内:そうですね。あとは運行管理者とかでしょうね。例えば物流向けだとか、色んな管理事業者が適用できるとした場合に、今我々が持っている地図情報とか、気象情報とか、電波の情報だとかをそれらの各管理事業者に提供し、ユーザーさんはその情報をアクセスして吸い取っていくみたいな感じですかね。

DPだいぶイメージが湧いてきました。
ドローンハイウェイは既存の送電線に沿って飛行させるということなので、既にどのようなルートを飛行させるか大体は決まっていますし、おそらく送電線を造る時点で周辺住民と東京電力さんの間で何かしらの契約が交わされているはずなので、全く関係の無いところにドローンのルートをつくるよりはハードルは低くなると個人的には考えています。
しかし、スマートドローンプラットフォームの場合は、ゼロからルートを造っていくことになると思います。ハードルも一気に跳ね上がると思いますが、どのように造っていくのでしょうか。


田内:スマートドローンプラットフォームは、KDDIさんが持っている通信網というのをきちんと利活用した上で、産業用ドローン、安全に飛行させるための3次元地図、というものを掛け合わせてサービス化していくというものになります。
仰るとおり地上の問題もあります。どこなら安全に飛べるというのは現状無いですよね。
なので例えば今考えられている用途の一つとしては、離島配送に使うとか、山間部の配送に使うとか、農薬散布に使うとか、そういった多方面の個別のソリューションに3社がタッグを組んで提供していこうという構想ですね。


DPなるほど。発表時のイメージ映像の印象が強かったので、都市部での活用を考えていました。


田内:当然都市部も将来的には考えております。


DPドローン関連のサービスって都市部は結局一番最後になりますよね。


田内:官民協議会が出してますけど、2020年以降の都市部でドローンが自律飛行できるようになる時代を見据えると、今はレベル1やレベル2の領域だと思うんですよね。
安倍首相が来年度には離島や山間部でやるよと仰られていますが、今KDDIさんや他社さんがやられているのは、将来を見据えてレベル3をどうやって実現するかというところで、そこでインフラ企業さん達はしのぎを削られている状況ですね。
そこで、将来的には物流や配送等がありますが、今使える用途といえば、インフラの維持管理だとか、精密農業に使うだとか、災害時の対応だとか、離島等への配送だとかに使っていくというのが直近ではないかなと思います。
測量とかそういったものは既に使われていますけど、それは狭いエリアで目視内で自律でできるお話なので、国のレベルでいくと少しステータスが違うかもしれないですね。
将来の都市部でドローンが自律飛行できるようになる時代を実現していくとなると、運行管理の機能が必要だということで、通信・気象・地図、それらをマネジメントするクラウド情報で提供していく必要性があるというのは、国主導で今言われてますので、そういったものが出来ていくのかなと思います。


DPUTM(ドローンの管制システム:UAV Traffic Management)は、海外ではAirmap、Unifly、PrecisionHawkがあって、日本ではそういうところと楽天さんやテラドローンさんやドコモさんが連携してやられているという状況ですよね。既存の旅客機等の航空管制との兼ね合いもあると思うので、最終的にはそんなに何社も存在し続けられないのかなと思っています。ただ、どこが勝ってもゼンリンさんは強力な地図データをお持ちなので、ずっとドローン業界の中心に居続けられるのだろうなと思っています。


田内:有難う御座います。(笑)

『ドローンポート』案

DP:先日の『ドローンハイウェイ』の発表時にドローンポートについても発表されていましたが、現時点で具体的なものは何かあるのでしょうか。まだこれからといったところなのでしょうか。


田内:ドローンポートについてはまさに今からといった感じです。
方向性で決まっているものについては、例えば変電所の遊休地ですとか営業所の屋上ですとか、東京電力さんが色々な設備を持っていらっしゃいます。そういう物理的な施設をお持ちで、電力事業をやっておられるのでメンテナンスをするような電気技術者もたくさん抱えられていますので、ドローンハイウェイ沿いの遊休施設にポートを造って、充電だとか点検だとか、車でいうガソリンスタンドのようなサービスを行っていくというようなことを東京電力さんは考えられています。

DP個人的にはマンションの屋上等にポートがあって、屋上から屋上へ運ぶ流れがやはり一番自然なのかなと思っていたのですが、最近では車からドローンを離着陸させる技術なども出てきてどれが正解だと考えておられますか。
車からドローンの離着陸というのは規制等考えると難しそうな気もしています。


田内:そうですね。やはり動的なものと動的なものをかけ合わせたサービスというのは既存のサービスでも無いと思います。
物流は大量輸送でないとコスト低減になりませんので、全てがドローンでやれるということは私はないと思っています。ただ、ラストワンマイルですとか、頻度を上げて配送しないといけないような用途っていうのは、逆にドローンの方がコスト低減に繋がるかなという風に思っています。

今後のゼンリンの動き

DP凄く将来的な話になるのですが、ドローンが上空を飛び交い、どこかのUTMがゼンリンさんの3D地図を基に動いていて、という時代になった場合。ドローンにはカメラが付いているので、ドローンが配送等で飛ぶたびに街の映像や画像が入ってきますよね。そうなると、素人目には元々の地図製作にも活かせそうですが、どうなんでしょうか。


田内:そうですね。一応基盤構築に向けて我々は空の3次元地図開発と、新たな計測手法の検証って言うのを行っているんですね。こういった今日お話しているようなプロジェクトに地図を提供していくっていうのもそうですけど、我々の地図作りについてもやっぱり新たな情報の取得方法とか、もしくは既存の調査方法の見直しとかには非常に寄与できるかなというふうに今は研究している段階です。


DP今は3D地図を作る時に建物の高さはどのように入れているのでしょうか。


田内:2つやり方がありまして、先ずは創業以来やっております住宅地図帳というものが御座いまして、これは調査員が歩いて一軒一軒調査をしているんですね。


DP1000人規模で行っているものですよね。


田内:そうです。1日1000人位が日本中どこかを歩いているんですけども、その人間が歩く時にこの建物は何階建てで、どのような会社が入っているか一つ一つ調べています。


DPその時にそこまで行うんですね。てっきりビルのテナント情報などだけだと思っていました。


田内:いえ、その時に階数情報とかも全て調べております。


DP凄いですね。


田内:あとは合わせて、カーナビゲーションとかもここ20年位やっておりますけれども、3Dの地図というのは2000年ぐらいから研究開発してサービス化しているんですけども、その時に計測車両という専用の機械を走らせているんですね。最近は自動運転車向けのより精度の高い地図なんかを作っているんですけども、そういった計測車両で撮影をすると。


DP計測車両って、車の上に機械が載っている車ですよね。あれで、道路の高低差だけでなく、ビルの測量も行っているということですか。


田内:はい。どちらかというと、それについてはテクスチャーベースでよりリアルな建物の情報とか看板を見せるというようなものですね。


DP本当にドローンが飛び交う時代になれば最新の地図とか直ぐに作れてしまいますよね。


田内:そうですね。リアルタイム更新というのは非常にニーズが高いでしょうね。


DPそれでは、これまでの歩き、計測車両の2つに加えてドローンが入ってくるかもしれないということですか。


田内:はい。可能性はあるかもしれないですね。


DP徒歩でのデータ集めの部分はドローンでは階数まで拾えないので無理ですが、計測車両のところはドローンで全部置き換えられるようになるのでしょうか。


田内:どうでしょうね。ドローンの機体の問題もありますし、写真の精度や飛行する高さにもよりますしね。
実は車で計測するのって凄く難しいらしいんですね。私も一度やらせてくれとお願いしたのですが、「難しいからダメだよ素人には。」と言われてしまいました。(笑)


DP測量であれば一定スピードでずっと走り続けなければならないですしね。(笑)


田内:はい。職人技のようです。


DPそれをお聞きするとやはりドローンで自動化できたら凄く楽そうですよね。オルソ画像もすぐできてしまいます。


田内:そうですね。今やはり写真で撮る物は比較的安価ですけども、オルソ化するのって凄く機材が高いんですよね。
車で行かないようなエリアについてはドローンで補完するっていうのはあるかもしれないですね。

話してみるとゼンリンって意外と地味だなと思いませんか。(笑)


DPいえいえ。(笑)
むしろ、ドローン事業推進課のような新しい取り組みを行うのが珍しいケースということに驚きました。
ゼンリンさんの歴史を見ると、時代を先取りして色々と動いてこられたイメージがありましたから。
GPSカーナビが出たのが1991年ですよね。1980年後半にはもうカーナビの事業には入っていらっしゃいますよね。

田内:そうですね。背景が実はありまして、今までは住宅地図というものを作るにあたって、職人さんが昔なんかは手書きでやっていたんですけれども、やっぱり今で言う職人不足のような状態に陥ることもあったので、いち早くデータベース化を始めたんですね。地図をデータ化するとうことは、建物の種類とか、人の名前とか、住所とか、色んなレイヤー構造になっているものの中からそれだけを抽出するということができるようにりまして、そうするとカーナビゲーションのルート生成とかにも使えるよね、ということになったわけです。ちょうどカーナビも80年代後半からメーカーさんが研究開発をし始めた状況でして、ドンピシャでタイミングが合ったというのが背景ですね。


DP創業者の大迫正冨氏の言葉で「地図は添え物ではなく、最も重要な情報源だ」というものがありますが、カーナビのお話もそうですし、最近のドローン業界での動きを見ていても、まさにその通りになっていますよね。創業1948年で、ただ地図を作っていたのではなく「最も重要な情報源」と解って作っておられたのが凄いなと思います。そもそも、それ位の可能性を感じていないと、大変な労力の掛かる地図作りはできないのかもしれませんが。


田内:そうですね。やはり地図って、一回作って終わりではなくて、作ると毎年のようにメンテナンスをしなければいけないんですね。うちはメンテナンスに莫大な費用が掛かっているんですね。それが固定費なんですけれども、それをどういうふうに収益を上げていくかっていうのがやはり重要でして、その一つとしてカーナビだったり、GISだったり、3Dのデータだったり、ドローンだったりっていう、ワンソースマルチユースっていう表現を社内では使っているんですけれども、それをどんどんやっていかないと収益化には繋がらないというかんじですね。


DP田内課長、個人的に事業推進課の中で今後こういうことがやりたいとかいうことはあったりするんですか。


田内:一つは、ドローンと言ってますけど、実は機械に読ませる地図なんですね。機械に読ませる地図ってまだまだ色んな用途があるなと思っておりまして、例えば屋内を地図化して、、、、、、みたいな事ですかね。(笑)


DP倉庫とかですか。


田内:そうですね。色々そういう用途とかが広がるのではないかなと思っていますね。


DP確かに機械に読ませる地図があった方がわざわざプログラミングして機体を動かすとかよりも正確ですよね。


田内:正確ですね。やはり地図がある必要性というのは、先ずは俯瞰ができるというメリットと、先読みするというメリットがあります。確かにカメラとセンサーがあれば自分のエリアって直ぐに判断できると思うんですけれども、先にどういう曲がり角があるのかとか、障害物があるのかとか、もしくは動的な情報で風がブンブン吹いてるよだとかいう情報が分かるのと分からないのとでは全然違うと思うんですね。その情報って非常に重要でして、それがやはり地図の役割ですよね。認知・判断・操作、これをカメラとセンサーと地図というのはそれぞれ補完できるわけです。

DPでは最後に、今後のドローン業界にこうなっていって欲しいみたいなものがあればお聞きしたいです。


田内:やっぱり産業利用の実用化ですかね。今はやっぱり実証しているケースは多いですけれど、実用化は一部しかできてないですよね。農薬散布、狭い範囲の測量くらいですか。建物や送電線の点検っていうのはまだまだ研究段階ですし。やっぱり何かしら具体的に実用化が始まっているというものがどんどん増えていかないと、ドローン全体の広がりとかドローン社会の実現というものができないと思っておりますので、一番はそこかなと思っていますね。


DP実用化ですね。


田内:はい。当然それに向けて規制の緩和とか色々あるとは思いますけど、それを議論すると鶏と卵になってしまいますから。


DPそうですね。実用化がいち早く行われ、真の『空の産業革命』が起こる日が来ることを楽しみにしています。

本日は有難う御座いました。


田内:有難う御座いました。

インタビュー後記

インタビュー中、田内氏は『話してみるとゼンリンって意外と地味だなと思いませんか。』と笑いながら話されていた。

確かにゼンリンという会社自体は、毎日意識するような目立つ存在ではないかもしれない。

しかし、ゼンリンの地図データが仮に一切使えなくなったらと考えてほしい。カーナビゲーション、GoogleMaps等、当たり前に使っているサービスが満足に使えなくなる状態。人々の生活の利便性は格段に落ちるだろう。それ程に、あって当たり前で、無くてはならないデータを持っている会社だと今回のインタビューを機に再認識させられた。

現状のドローン業界から引く手数多になっている状態も自然な流れで、『ワンソースマルチユース』の強さを遺憾なく発揮している。

インタビュー中にも出てきた、創業者大迫正冨氏の「地図は添え物ではなく、最も重要な情報源だ」という言葉の通り、地図データというのは、2次元地図から3次元地図へ、人が読む地図から機械に読ませる地図へと、その時代のニーズに合った形に変化しながらいつまでも我々の生活を支えていってくれる存在なのだろう。

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