ご存知のとおりドローンの活躍の場は、空撮、インフラ点検、農薬散布、配送などの屋外がやはり主となります。
しかし、人が入れない場所に入り込むことができ、高画質の映像や赤外線映像まで撮影できる特性から、閉ざされた空間での活用にも注目が集まっています。
今回はその中でも昨年実証実験が行われた、国が実施する下水道革新的技術実証研究(※B-DASH プロジェクト)の予備調査として採択された、水道コンサルティングの(株)日水コン、ドローン関連サービスのブルーイノベーション(株)、横浜国立大学、横浜市の4者が産学官連携で研究開発を進めているドローンを活用した下水管の点検実験について紹介します。
※Breakthrough by Dynamic Approach in Sewage High Technology Project 新技術の研究開発及び実用化を加速することにより、下水道事業におけるコスト縮減や再生可能エネルギー創出等を実現し、併せて、国内企業による水ビジネスの海外展開を支援する国土交通省の事業。
作業効率は約9倍増し、安全性も向上
従来の下水管の内部点検は、作業員が中に入り目視点検を行う方法のほか、カメラを搭載した小型無人車を遠隔操作する方法がありました。
ただ、管内は堆積物から硫化水素などの有毒ガスが発生する危険性や、降雨時に水位が上昇する危険など生身の人間では作業上のリスクがあります。小型無人車にしても、走行させる際の水流への対処やケーブルをつないで操作するなどの制約があり、利用できないケースが多くありました。しかし、ドローンであればそれらのリスクと制限を解決できる上に、作業効率を飛躍的に上げることも期待できます。
使用するドローンはライトと複数のカメラを搭載。人間の目のように複数のカメラで3次元(3D)の空間情報を解析し、障害物との距離を把握します。また、ブルーイノベーションが開発した自動飛行技術を活用しており、ドローンを自動で飛行させる場合に本来必要なGPSの情報を受信できない下水管の中でも、下水管の敷設場所を記した地図データとの組み合わせにより自動飛行が可能になります。
この技術により、作業員が下水管の中に入って行う点検の場合は1日あたりの距離が600メートル程度だったところを、1日あたり5キロメートル以上点検が可能になるといいます。
国内には耐用年数を超えた下水管が山ほど
現在の全国の下水管の総延長は約46万キロメートルと言われています。その中の1万キロメートルは1960年代以前の敷設で、耐用年数とされる50年を既に超えてしまっています。1万キロメートルといえばフランス、イタリア、カナダ、アメリカに行けてしまう気が遠くなりそうな距離です。
そんな状況もあり、下水管の老朽化が原因とされる道路陥没は年間3千件以上発生しており、点検の重要性が高まっています。
しかし、従来の点検のやり方では耐用年数を超えた1万キロメートルを点検するだけでも膨大な時間と労力が掛かってしまうため、今回のケースような最新技術を活用した革新的な点検技術が早急に求められているのです。
実際にこの技術が使われるようになると何が変わるのか
この研究が実を結び、実際に点検や調査の現場で活用されるようになると、調査困難箇所の調査実現、安全かつ効率的な調査技術の確立、調査費用の低コスト化等の実現が期待されます。
また、GPSが届かない上に、狭い空間での飛行はドローンが巻き上げた反射風が機体の安定を妨げるため、このような環境下の自動操縦での安定した飛行技術は、下水管以外の環境でも十分に応用可能だと考えられます。